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脊椎圧迫骨折は転んだり、しりもちをついたり、転落や事故などの外傷により生じることが多い疾患です。基本的に脊椎椎体はかなりしっかりとした構造を持っており、通常はよほど大きな力がかからないと折れることはあまりありません。しかし、骨粗鬆症などで骨が弱くなっている場合には、軽い力でも折れてしまうことが少なくありません。特に骨粗鬆症が高度な患者様の場合、咳やくしゃみなどで骨折を起こしてしまわれる場合もあります。 
 また、ある種の薬剤を長期間使用すると骨粗鬆症が生じることが知られています。このように生じた骨粗鬆症を薬剤性骨粗鬆症と呼んでいます。これらの骨粗鬆症により椎体骨折を生じると非常に強い痛みが生じたり、背骨の変形が生じることがあります。 
 

 
 
また、脊椎椎体に生じる腫瘍(血管腫、骨髄腫など)や悪性腫瘍(癌など)が脊椎椎体に転移し、これらによる椎体の破壊が進行すると、強い痛みが生じたり、背骨の変形などが生じることがあります。 
 脊椎圧迫骨折は受傷初期から適切な治療が行われれば手術などの治療を必要とせずに2週間程度で痛みが改善するのが一般的です。しかし、このような治療を行っても一定の割合(10-30%程度)で痛みの改善が得られない方がおられます。こうなると痛みのために動けなくなり長期間の臥床を余儀なくされ、筋力の低下や全身状態の悪化を来たして“寝たきり状態”になってしまわれる方も少なくありません。さらにこのような状態となると認知症の発症や増悪もしばしば認められ、患者様御本人、御家族の負担が大きくなるという問題があります。 

 

1 外科的治療(手術)以外の治療法 
-薬物療法、理学療法等 

 
脊椎圧迫骨折に対してまず選択される治療です。骨折部位をギブスやがっちりとしたコルセットで固定し、骨折の自然治癒と痛みの改善を図る方法です 
 
① メリット 
外科的治療法(手術)に比較して侵襲が少なく、治療に伴う合併症の危険も外科的治療法(手術)に比べて少ないことから症状が軽微な場合や初期の病状の場合にはメリットが大きいものと考えます 
 
② デメリット 
骨折の治癒までに時間がかかり、その間痛みが続くことがあること。安静期間が長期となり筋力低下などを生じやすいこと。骨折の治癒が得られないことがある(10-30%程度)。などの問題が考えられます 
 
 
 

2 外科的治療(手術)法 
-外科的治療(手術)法の種類と内容 

 
① 脊椎固定術 
骨折により不安定になった椎体に対して骨折した 上下の椎体にスクリューを打ち込んで、その間を金属の棒で固定するなどの方法で骨折の治癒をはかる方法です。大掛かりな手術となることが多く、リスクも高くなる傾向にあります 
 
 経皮的椎体形成術 
新しい治療として経皮的椎体形成術という治療法が開発されました。この治療は皮膚を大きく切開することなく背中から骨折した椎体にX線透視下に針を刺し、PMMA(レジン:歯科の治療などで使われる高分子化合物)を注入し骨を中から固めます。この治療をおこなうことで痛みの改善や脊椎の安定が得られるなどの効果が期待されます。 
 
症状や画像検査所見、全身状態など様々な角度より患者さんの治療法を検討しました。その結果、経皮的椎体形成術での治療が良い方法であると我々は考えます 

 
経皮的椎体形成術は1980年代にヨーロッパではじまった方法です。我が国では一部の医療機関で2000年頃から行われるようになりました。現在までにいくつかの方法が開発されていますが、我が国ではバルーン・カイフォプラスティー(BKP)と呼ばれる方法が2011年より保険収載となりました(健康保険診療での治療が可能となりました)。我々は現在まで1200回、1600椎体以上の経皮的椎体形成術の治療実績を有しております 
 
 
ア 骨折した椎体に針を刺し、椎体内にPMMAを注入することで椎体骨折を修復し、脊椎の安定や痛みの改善を図る治療です 
 
イ 実際の治療に当たっては、背中の皮膚を数ヶ所、5mm-1cmほど切開します(治療を行う椎体の数などにより多少異なります)。椎体内に針を刺していきます。針が目的の位置まで来たらPMMAを慎重に椎体内に注入していきます 
 
ウ PMMAの注入に先立って特殊なバルーン(風船)を用いて椎体を押し拡げる処置を行う場合があります。 
 
エ 手術は、腹臥位(腹ばい)で行います。治療中はX線透視で観察しながら行います。 
 
オ 必要十分なPMMAの注入が終了したら針を抜いて治療を終了します。 
 

 
 
①メリット 
ア  固定術に比較して非常に小さな侵襲で治療が可能であり、高齢者などでも比較的安全に治療を行うことが可能です  
 
イ  非常に高い割合で(90%以上)治療直後から痛みの改善が得られます 
 
  術後の安静も約1時間程度と短時間です 
 
 
②デメリット-手術の合併症 
ア 出血 手術により予想される出血は通常は極めて少量です。しかし、全身合併症や椎体腫瘍に対する治療を場合などにはある程度の出血が予想されます。極めて稀ですが輸血が必要となることがあります。輸血を施行した場合には、輸血による肝炎などの主にウィルス性の感染や免疫反応などの合併症が報告されています。 
 また、手術後に創部の出血が続き血腫を形成する場合があります。血腫により神経圧迫を生じた場合には手術(止血、血腫除去)が必要となる場合があります 
 
イ 感染 創部の感染の可能性も極めて低いとされています。抗生物質にて予防・治療に努めますが感染が生じた場合には治療期間が延長したり、非常に稀ですが再手術を要する場合があります 
 
ウ 神経障害、臓器障害 極めてまれですが針の刺入に際して脊髄などの神経を損傷したり、椎体周囲の臓器を損傷する可能性があります。 
 
エ PMMAによる問題 注入したPMMAが椎体外に漏れ出たり、血管内に入り込んでしまうことがあります。少量であれば問題になることはありませんが、大量に漏れると神経障害や呼吸循環障害を生じることがあります。またPMMA自体が有機化合物であり一定の毒性が報告されています。しかしPMMAは古くから人工骨の材料として脳神経外科や整形外科の手術で使用され、歯科の治療材料としても広く用いられているものです。 
 
オ 新規骨折 治療を行った後に他の椎体に新たに骨折を生じる場合があります。必要があれば新たに生じた椎体骨折に対しても経皮的椎体形成術を行うことも可能です。このような骨折を予防するために骨粗鬆症などの原疾患に対する治療や、コルセットによる外固定の併用などが必要です。 
 
 造影剤や使用する薬剤によるショックなど この治療にはごく少量の造影剤を使用します。使用する造影剤は、まれに病気や体質によっては次のような副作用が起こることがあります。 
1軽い副作用;むかつき、嘔吐、かゆみ、蕁麻疹など(約3%) 
2)重篤な副作用;呼吸困難、急激な血圧低下、心停止、意識消失など(約0.04%) 
 
キ その他 ごく稀に予期できないような命に関わる合併症が生じる場合もあります(頻度不明)。