HOME | 腰椎すべり症

1 腰椎は通常5つの骨が積み重なるような形で構成されており、骨と骨の間には椎間板と呼ばれるクッションの働きをするものがあります。骨と椎間板は前後にある靱帯(前縦靱帯と後縦靱帯、黄色靭帯)と呼ばれる強い帯で止められているため、複雑な動きにもバラバラにならないようになっています。これらの骨や椎間板及び靱帯によって囲まれた管のような空間を脊柱管と呼びますが、脊柱管の中に硬膜という袋があり、硬膜の中には脳脊髄液と呼ばれる透明の水が満たされていて、その中を脊髄とそこから出る神経が走っています。 
 
2 椎間板がとび出したり(椎間板ヘルニア)、骨が変形してとび出したり(変形性腰椎症)、黄色靭帯が厚くなったり、骨のように硬くなったり(黄色靭帯骨化症)すると硬膜嚢を圧迫して、脊髄と神経を圧迫します。 

 
 

腰や足に痛みや痺れが生じたり、力が入らなくなったりなどの症状が出現します。まっすぐに立ったり、歩いたりするとこれらの症状が出現し、長時間の立位や歩行が不可能となる(間欠性跛行)場合があります。特にすべり症がある場合、ずれた骨により脊柱管が高度に狭くなり(狭窄)強い症状が見られる場合もあります。腰椎分離症も伴う場合は、分離症の内すべり症に比べ骨のずれが大きくなることがあり、分離した骨の周りの結合織(分離部を埋める軟部組織)で神経根を圧排することがあります。 
 

 
 

外科的治療(手術)以外の治療法 
-薬物療法、理学療法等 

 
腰椎装具の装着や鎮痛剤、血管拡張剤などの内服など、温熱療法やマッサージなどにより症状の改善を図る方法です 
 
① メリット 
外科的治療法(手術)に比較して侵襲が少なく、治療に伴う合併症の危険も外科的治療法(手術)に比べて少ないことから症状が軽微な場合や初期の病状の場合にはメリットが大きいものと考えます。 
 
② デメリット 
現在の医学では内服や注射により狭くなった脊柱管を広げることはできません加齢変化に伴い時間とともに症状が増強することもしばしば見られます。
   

外科的治療(手術)法 
-外科的治療(手術)法の種類と内容 
 
【手術法①】椎弓形成術

 
我々は手術用顕微鏡を用いてより安全かつ有効な術式とするように努力をいたしております。 以下に我々が行っている腰椎椎弓形成術についてご説明いたします。 

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ア  脊柱管の後の部分は椎弓と呼ばれる部分で覆われていますが、この部分を拡げることにより脊柱管を拡げて神経への圧迫を解除する手術を行います。 
 
イ  実際の手術に当たっては、X線透視やX線撮影で切除する椎弓の確認を行い、皮膚切開を行う部位を決定します。切開の大きさ(長さ)は切除する椎弓の範囲によって変化します。必要最小限の切開にとどめるように努めますが、椎弓の切除範囲が広い場合は皮膚切開も多少長くなります。棘突起と呼ばれる背骨の突出部分を切断し、椎弓を露出します。ドリルを用いて目的の椎弓を削り取り、その奥にある黄色靭帯を丁寧に除去します。靭帯の奥にある神経を包んでいる膜(硬膜)を露出確認して、さらに枝分かれしている神経の周囲の靭帯も丁寧に取り除きます。椎間板が突出しており神経を圧迫していると判断された場合には椎間板の除去も併せて行う場合もあります。除去した椎弓の部分に特別にデザインしたセラミック製の人工骨(M-Spacer)を挿入し強固な糸で縛り付けて固定します。  
 

椎弓の切除 
 
 
M-スペーサ
 
 
 
 
M-スペーサーの挿入
 
 
  

ウ  手術は、全身麻酔下に腹臥位(腹ばい)で行います。 
 
エ  稀ではありますが術後の脊椎の不安定性などにより前方固定術など追加手術を要することがあります 

 
 

■メリット 
ア  手術により神経の圧迫が解除され、腰痛や下肢のしびれ痛み、間欠性跛行等の症状の改善が期待できます。症状の改善率は術前の状態によっても違いはありますが80-90%程度(一部改善を含む)と報告されています。下肢痛あるいは間歇性跛行は改善しやすい症状ですが、痺れ、特に足底部の痺れは残存する傾向があります。術前より高度の運動麻痺が存在する場合には、運動麻痺が改善するために長期間要する場合があります。また、術後、腰痛や下肢痛が残存した場合でも筋肉の緊張を緩和する治療により改善する場合があります。 
  
イ  外科的治療法(手術)以外の治療法(薬物治療、理学療法等)は、根本的な治療法ではないと考えられております。 
 
ウ  自分の骨と一体化することで100年の強度、長期安全性が特許で証明されています。
 
 
■デメリット-手術の合併症 
ア 出血  手術によりある程度の出血が予想されます。稀ですが輸血が必要となることがあります。輸血を施行した場合には、輸血による肝炎などの主にウィルス性の感染や免疫反応などの合併症が報告されています。また、手術後に創部の出血が続き血腫を形成する場合があります。血腫により神経圧迫を生じた場合には再手術(止血、血腫除去)が必要となる場合があります。 
 
イ 感染  創部の感染の可能性が約数%程度あります。抗生物質にて予防・治療に努めますが感染が生じた場合には治療期間が延長したり、非常に稀ですが再手術を要する場合があります。 
 
ウ 神経障害  一般的に、痛みあるいは運動麻痺は改善しやすい症状ですが、痺れは術後も残存する傾向があります。これは、脊髄や神経の回復の程度は、脊髄障害の程度により決まり圧迫が解除されても、依然として脊髄や神経自身の障害は残存しているためと考えられます。また手術により痺れや痛みが強くなったり、術前に見られなかった部位に痺れや痛みが出現することがあります(10程度)が多くの場合は一時的です。稀に再手術を要する場合があります。また、ごく稀に痺れ、痛み、下肢麻痺、そして排尿排便障害が発生し、症状が遺残することがあります。 
 
エ 硬膜損傷  手術中に硬膜が破れて中の脳脊髄液が漏れ出すことがあります。 
その場合にはクリップや特殊な糊を用いて、硬膜の修復を行いますがそれにも関わらず術後に創部に髄液が貯留することが3程度あります。自然に軽快する場合もありますが、薬剤の投与、再手術などの治療を要する場合もあります。この際に糊として使用される薬剤は血液を原料に作られており使用時には輸血同様に同意書が必要な薬剤です。 
 
オ 胸・椎の変形や不安定性  手術では胸・腰椎の支持組織をできるだけ温存するようにいたしますが、それでも長期的にみると胸・腰椎の変形や不安定性を発生する場合が数%程度あります。その場合には、再手術により胸・腰椎の固定を要する場合があります。 
 
 

 
【手術法②】脊椎固定術

 
単なる脊柱管狭窄症に対する外科的治療法(手術)は椎弓切除術または椎弓形成術が選択されるのが一般的です。分離症があると骨削除することでさらにずれが大きくなり、術後に腰痛が悪化することが危惧されます。そこで、ずれた椎骨に椎弓根スクリューというチタン合金のねじを挿入し、金属のロッドでつなぎ合わせます。(後側方固定)椎間板をできるだけ摘出し、ここに人工骨と椎弓から摘出した自分の骨を詰めることもあります。(後方椎体間固定) 
手術は全身麻酔下で腹臥位(うつぶせ)の状態で行います。手術が終了すれば麻酔が覚める前に仰向きになります。 
 

 
■メリット 
ア  手術により神経の圧迫が解除され、腰痛や下肢のしびれ痛みの改善が期待できます。症状の改善率は術前の状態によっても違いはありますが80-90%程度(一部改善を含む)と報告されています。下肢痛は改善しやすい症状ですが、痺れは残存する傾向があります。術前より高度の運動麻痺が存在する場合には、運動麻痺が改善するために長期間要する場合や運動麻痺が残存する場合もあります。また、術後、腰痛や下肢痛が残存した場合でも筋肉の緊張を緩和する治療により改善する場合があります。 
  
イ  ずれた骨がある程度矯正されることも期待できます。最終的には自分の骨どうしで固定されるので骨癒合が完成すればずれる心配がなくなります。 
 
 
■デメリット-手術の合併症 
ア 出血
手術によりある程度の出血が予想されます。また、手術後に創部の出血が続き血腫を形成する場合があります。血腫により神経圧迫を生じた場合には再手術(止血、血腫除去)が必要となる場合があります。 
 
イ 感染
創部の感染の可能性が約数%程度あります。抗生物質にて予防・治療に努めますが感染が生じた場合には治療期間が延長したり、非常に稀ですが再手術で金属を抜去する場合があります。 
 
ウ 神経障害
一般的に、痛みあるいは運動麻痺は改善しやすい症状ですが、痺れは術後も残存する傾向があります。これは、脊髄や神経の回復の程度は、脊髄障害の程度により決まり圧迫が解除されても、依然として脊髄や神経自身の障害は残存しているためと考えられます。また手術により痺れや痛みが強くなったり、術前に見られなかった部位に痺れや痛みが出現することがありますが多くの場合は一時的です。稀に再手術を要する場合があります。また、ごく稀に痺れ、痛み、下肢麻痺、そして排尿排便障害が発生し、症状が遺残することがあります。 
 
エ 硬膜損傷
手術中に硬膜が破れて中の脳脊髄液が漏れ出すことがあります。 
その場合にはクリップや特殊な糊を用いて、硬膜の修復を行いますがそれにも関わらず術後に創部に髄液が貯留することが3%程度あります。自然に軽快する場合もありますが、薬剤の投与、再手術などの治療を要する場合もあります。この際に糊として使用される薬剤は血液を原料に作られており使用時には輸血同様に同意書が必要な薬剤です。 
 
オ スクリューの誤挿入 
椎弓根スクリューは骨の中に挿入しますが、挿入位置がずれると骨の外に出て神経障害をきたすことがあります強い痛みが出ることが多く、再手術でスクリューを入れなおす必要があります。 
 
カ 隣接椎間障害 
ずれたところがうまく固定されると、すぐ隣の椎間に負担がかかり手術から数年して椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症が生じることがあります。本手術では完全に避けることはできないため必要に応じて再手術を検討する場合があります。 
 
キ スクリュー抜去 
原則として骨癒合が完成すればスクリューを抜去することが推奨されています。特に問題がなければ抜去せずに経過観察を見ることも少なからずあります。 
 
 

【手術件数】

  病名
手術名
2017
2018
2019
2020
2021
 腰椎すべり症  椎弓切除術 0件 0件 0件 0件 1件
 脊椎固定術 0件 3 0件 0 1
 腰椎分離すべり症  椎間板摘出術 0件 1件 0 0 0

【手術件数】

2017
2018
2019
2020
2021
腰椎すべり症
椎弓切除術
0件 0件 0件 0件 1件
脊椎固定術
0件 3 0件 0 1
腰椎分離すべり症
椎間板摘出術
0件 1件 0 0 0