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1 痛み”はさまざまな原因で生じます。打撲や捻挫、骨折などのように骨や筋肉や関節などを痛めたことによりその部分が激しく痛むことはしばしば経験することです。このような痛みを侵害受容性疼痛と呼びます。 
また、帯状疱疹後神経痛や坐骨神経痛、三叉神経痛などのように神経が傷む(損傷する)ことで強い痛みが生じるものもあります。このような痛みを神経障害性疼痛と呼びます。 
多くの痛みはこれらのいずれか、もしくはこれらが混合したものに分類することが出来ます。 
 
2 “痛み”は出現してから時期により急性疼痛、亜急性疼痛、慢性疼痛というようにも分類されます。一般に急性疼痛は身体に異常が生じた際のサインと考えられており、痛みの原因を探り適切な治療を行うことで疼痛の改善を図ります。しかし痛みの原因の特定が困難だったり、治療が困難な場合には痛みが遷延(長く続き)し、亜急性疼痛、慢性疼痛へと移行していきます。慢性疼痛となると疼痛の改善が困難となり長期間痛みに苦しむ場合も少なくありません。このような状態を慢性難治性疼痛と表現します。  

 
                      

とりうる治療法 
 
1 薬物療法 

 
痛みに対する治療として最も一般的な治療といえます。痛み止めなどの内服やシップなどの外用薬も使用されます。最近は神経障害性疼痛や難治性疼痛にも効果を示す薬剤も開発されています 
 
① メリット 
侵襲が少なく、治療に伴う合併症の危険も手術療法などに比べて少ないことから症状が軽微な場合や初期の病状の場合にはメリットが大きいものと考えます 
   
② デメリット 
使用する薬剤にもよるが長期間の使用で重篤な副作用を生じるものも報告されています。十分な治療効果が得られない(薬が効かない)ことも少なくありません 
 
 
 

 2 理学療法 
 

痛みのある部位を温めたり、マッサージしたり、体操やストレッチなどを行うことで痛みの緩和を行う方法です。時に鍼灸を併用したりする場合もあります 
 
① メリット 
侵襲が少なく、治療に伴う合併症の危険も手術療法などに比べて少ない方法です。薬剤などを使用しないので副作用などの危険性が少ないと考えられます 
 
② デメリット 
効果が一時的であることが少なくありません。効果を持続させるために頻繁な施術が必要となる場合があります。十分な治療効果が得られない(薬が効かない)ことも少なくありません 
 
 
 
3 神経ブロック療法 
 
痛みの原因となっている神経や痛みを伝える神経に麻酔をかけることにより症状の緩和を図る方法です 
 
① メリット 
比較的侵襲が少ない治療法です。治療直後から痛みの改善が得られることも少なくありません。一般に通院での治療が可能です
 
 ② デメリット
効果が一時的であることが少なくありません。頻繁に繰り返すと感染や神経損傷などを生じる可能性があります 
 
 
 
4 手術療法 
 
痛みの原因が特定できている場合には、この原因を手術にて取り除くことにより症状(痛み)の緩和が可能な場合があります。痛みの原因の除去が不可能な場合でも痛みを伝える神経の経路や痛みを感じる脳の一部を破壊したりすることで痛みの緩和を図る方法もあります 
 
① メリット 
痛みの原因を取り除くことで根治的な治療となりうる場合があります。治療直後から痛みの改善が得られることも少なくありません 
 
② デメリット 
侵襲が大きく、そのほかの治療法と比較するとリスクが高い治療となります。手術による治療の対象となる患者様は一定の要件を満たす限られた方のみとなります 
 
 
 
5 脊髄刺激療法 
 
痛みを伝える脊髄を微弱な電気で刺激することで痛みの緩和を図る治療法です 
 
① メリット 
手術に比べると比較的侵襲が少ない治療法です。局所麻酔での施行が可能であり全身麻酔のリスクが高い患者様や高齢者でも治療が可能です。最初により侵襲の少ない方法で治療効果の有無を試してみることが出来ます(トライアル) 
 
② デメリット 
治療効果は患者様により個人差が大きく認められます。体内にリードや刺激装置を埋め込むことにより一部の検査や治療が行えなくなることがあります 
 
 
症状やMRIをはじめとする画像検査所見などより様々な角度より患者さんの治療法を検討しました。その結果、脊髄刺激療法が良い方法であると我々は考えています 
 

 
(1)脊髄刺激療法とは 
痛みは、末梢から脊髄を通って脳に伝わってはじめて、「痛い」ということを認識します。痛みのある部分を支配する神経に繋がる脊髄に微弱な電気を流すと、痛みの信号が伝わりにくくなると言われています。脊髄刺激療法は、1967年にこの理論を応用して開発された治療です。 
脊髄刺激療法では、痛みの信号が脳に伝わる前に微弱な電気刺激を調節することによって痛みをやわらげます。ひじをぶつけたときに、ひじをさするようなことだと考えていただいてもよいでしょう。ひじをさすることによって痛みがやわらぎます。脊髄刺激療法も同様に、微弱な電気刺激によって発生する刺激感が痛みの部分を覆います。 
また、痛みの症状は個人によって大きく異なり、さらに一日においても変化することがあります。そこで、脊髄刺激療法では痛みの強度に合わせて、患者さんが刺激感の入切や強弱などを調節できるようになっています。患者用プログラマという調節機器を使い、その日の姿勢や動きによる痛みの変化に合わせて、刺激感を調節し最適な状態を維持していただきます 
 
 
(2)使用する機器、方法 
脊髄に刺激を与えるために、脊髄と脊椎の間にあるスペース(硬膜外腔(こうまくがいくう))にリードと呼ばれる導線を挿入し、腹部や背中、お尻などの皮下脂肪の部分にペースメーカと構造が似た刺激装置を植込みます。刺激装置からリードを通して脊髄に微弱な電気を流すと心地よい刺激感で痛みの部分が覆われ、痛みがやわらぎます 

 

この治療では刺激装置やリードを体内に埋め込む前に、まずリードのみを硬膜外腔に挿入し体外で刺激装置に接続した状態で試験刺激を行い治療効果を判定するトライアルを行います。トライアルの結果、良好な治療効果が確認された場合に再度リードや刺激装置の埋め込みを行うことを検討いたします。 
トライアルは約1週間程度の期間で行い、当院では入院で行っております。トライアル期間中は小型の刺激装置を携帯していただき、歩いたりなどの日常動作を行っていただき治療効果を判定します。 
機器の体内への埋め込みに先立ってより小さな侵襲で治療効果を評価し、その結果で埋め込みを行うか否かの判断が出来るということがこの治療法の大きなメリットであると考えます。 

 

 

 
トライアルで治療効果が認められ、埋め込みを希望された患者様に対してのみ機器の埋め込みを行うことを検討させていただきます。 
機器の埋め込みは通常トライアル終了後、2週間から1ヶ月以上の間隔をおいて行います。
 
本埋め込みではリードの挿入部(主に背中や腰の部分)、刺激装置を埋め込む部分(側腹部や腰部、臀部などのいずれか)それぞれに5-6cm程度の切開を行います。さらに場合によってはリードの中継点に1cm程度の切開を行います。切開部には局所麻酔を行い切開します。 
切開部は糸や特殊な器械を用いて縫合します。創部が癒えるまで1週間程度の入院が必要になります。 
入院中に器械の操作についてご説明いたします 
 

 

 
(3)メリット (脊髄刺激療法により期待される治療効果) 
脊髄刺激療法により、次のような効果が期待できます 
痛みがやわらぐ。(それにより、活動レベルが上がる)  
薬の投与量が減る。(それにより副作用が軽減される。) 
神経ブロックの回数が減る。 
 
 
(4)デメリット (脊髄刺激療法の合併症などの問題点) 
生死に関わるような重篤なリスクは非常に稀ですが、考えうるリスクは次のとおりです 
植込まれたリードの位置ズレが起こり、痛みを緩和する刺激感が得られなくなる 
刺激感が変化し、効果が得られなくなる。 
刺激感そのものを不快に感じる。 
植込み部分に多少の違和感がある。 
操作機器が水濡れなどにより、操作不能となる。 
感染のリスク 
機器の再留置、交換のための追加手術が必要になることがある。   など 
 
 
(5)リスク 
生死に関わるような重篤なリスクは非常に稀ですが、考えうるリスクは次のとおりです 
リードの刺入に際して硬膜や脊髄などの神経を損傷し痛みや麻痺などが出現する 
・リードのずれや抜け落ちにより治療効果の評価が不十分となる 
刺激感そのものを不快に感じる。 
・切開や穿刺に伴う出血。 
感染のリスク   など 
 

 

 

手術直後 
手術後の数日間は、創部を不快に感じやすいようです。この「創部の痛み」は打撲のように感じられます。 
手術直後は、感染症予防のため、抗生物質を使用します。
 
手術後2~8週間 
手術後2~8週間経っても刺激装置の植込み部位に違和感を感じることがあります。その場合の違和感は、組織の治癒プロセスが原因です。どんなタイプの植込み術でも生じる、植込みに対する身体の自然な反応です。 
こういう症状が見られる場合は、何かを持ち上げる、身体を曲げたりねじったりする動きは、避けた方がいいとされています。術後6~8週経ったら、これらの動作も普通の注意で構いません。 
 
創傷治癒後 
傷が癒えた後には植込み機器に特別な注意は必要ありません。ただし、植込み機器を損傷しかねない激しい運動は担当医師にご相談してください。 
 
 
脊髄刺激療法と日常生活 
機器を植込むことによって家事や身の回りの世話などの日常生活に支障をきたすことはありません。手術後、2-3ヶ月程度で術後状態が安定すると、軽い運動から活動を再開することができます。 
激しい運動は担当医師にご相談ください。 
 
診察 
脊髄刺激療法は、時間とともに慣れてくることによって強い刺激感が必要になることがあります。 
また、一部の痛みがやわらぐことによって他の部分が痛く感じることもあります。病状の進行や薬の変更により、刺激感が十分でなくなることもあります。刺激感を最適に保つために定期的な診察を受けることが重要です。 
次のことが発生した場合は、診察時に医師に伝えてください。 
別の部分に痛みを感じ始めた 
これまでと違う痛みを感じた 
刺激感の異常な変化に気づいた 
刺激装置の電源が入っているのに刺激感が得られない 
刺激の回数が増えている 
刺激感の得られる場所が予期せず変化した 
 
植込み機器の抜去 
脊髄刺激療法は、必ずしもすべての人が一生受け続けるというわけではありません。病状が進行して、他の治療に変更することや、痛みが改善して不要になることもあります。脊髄刺激療法は神経を傷つけないので、必要でなくなった場合は機器を抜去することができます。 
 
交換 
脊髄刺激療法の刺激装置は、電源と回路が一体となっているため、内部の電池が消耗すると刺激装置本体を交換する必要があります。電池は数年持続することがほとんどですが、患者さんの使用頻度や設定によって大きく電池寿命が異なります。電池を交換するためには、手術を伴いますので入院が必要になります。また、なんらかの異常が起こった場合は、植込み機器を交換することもあります。